小平先生がご病気になられ入院されたのは2017年でした。
早いもので、もう2021年の夏で4年目を過ぎようとしています。
先生が入院されておられた時に、お見舞いに病院に伺い、
先生から日頃考え続けてきた太極拳についてお話していただきました。
先生の了解を得て、お言葉を録音させていただいたので、少しづつ紹介したいと思います。
楊式太極拳の大架式について
小平(以下では、Kで示しています。cは聞き手の生徒です)
楊式の大架式と小架式の違いについて考えたことはあるか。
c
わからないです。
K
陳式の小架式と大架式の区別は俺はわからない。
楊式は両方習ったからわかる。
グレッグ先生(から)は小架式
(を習った)。
傅清泉は大架式(を教えてくれた)。
明らかに力の出方が正反対。
ここがみんな分かっていない。
楊澄甫(の写真)を見たら、
彼自体が100kg超えている大男だし
動作は大きいし、
あの人の写真が、動作が世界で初めて太極拳の
指導者の映像が、写真になった。
それ以前はない。
(多くの人は動作が大きとか体が大きいから大架式だと
思っている。しかし、それは違うと俺は思う。)
(この違いを)もっとわかりやすく言うと
後ろの足から力を出して前に伝えるのが小架式。
だから制定拳はどんなに大きくやっても小架式。
定式で前に体重が乗る。
傅清泉の動作は(例えば摟膝拗步で説明すると、)
前の足に力が伝わって、
前の(掌の)手に、(前足と)反対の側から伝わる。
こう言う説明は誰もしていない。
俺もグレッグ先生に6年間習った。
先生は常に後ろの足のかかとから力は前に伝わると言った。
これは間違ってもいないし、普通にやれば難しくない。
この最大の欠点はなんだと思う。
C
わかりません。
K
なぜ大架式では弓歩の前の足が完成した瞬間に力を出すのか。
例えば、ランチュウエイのポンで、
前の足に体重が乗ってから力を
相手に伝える。
一つの理由は、向こうに行くまで相手に近づくまで
自分の気配を消してしまう。
制定拳は前に進みながら相手に圧力をかけて行くショ
(”ショ”は北海道弁です)
小架式も同じ。
説明がわかりにくいが後ろの足から力を出すのは
相手も同じことをしたら体のでかい奴の勝ち。
双方の押し合いでは体の大きな奴の勝ち。
これが制定拳。
前に行ってから力を出すのが大架式。
小さい奴が大きい奴に勝てるのが武術。
(大架式は)これで小さい奴が勝てる。
私はずっと傅清泉を見て、(これが)分かった。
彼の(太極拳)はグレッグ先生とは全く違う。
弓歩を作って行った時の手の位置が大切。
弓歩の前足のクワが立っている状態で
この手に位置はここ……
(以下、動作の説明がしばらく続くのですが
具体的なお言葉がありませんので
録音されている言葉を再録を中止します。)
以上が、小平さんのお言葉です。
最近ようやく、この大架式の説明内容が
理解できるようになりました。みなさんは
いかがでしょうか。
簡単な解説ですが、ここに登場する
グレッグ先生は、1970年代から
1980年代にかけて、小平先生が
伝統楊式太極拳を初めて学ばれたときの先生です。
現在、ニュージーランド在住しています。
グレッグ先生は、それ以前に中国で
英語教育に携わり、そのときに
現地で伝統楊式太極拳を教わりました。
その後、札幌の大学で英語を
教える傍ら、当会を訪れたのでした。
また、グレッグ先生は推手の名手で、
小平先生もその推手の技を教わり
その技量を磨いたそうです。)